異国情緒あふれる祈りと恵みの島
南風(はえんかぜ)香る天草

掲載:2017年 vol.28

熊本県の中心部から南へ進んだ先に、大小さまざまな島々が浮かぶ、天草諸島があります。
海に囲まれた地理や気候にも恵まれたこの地は、風光明媚な絶景の数々や、人々の温かい人柄、里海の美味などたくさんの魅力にあふれています。
また、キリシタン文化が育まれた、歴史的に重要な地域でもあります。
今回は、天草の見どころをたっぷりとご紹介。
ぜひこの春訪れて、島の南風を感じてください。

のどかな港町のそばに佇み、人々の暮らしを見守る﨑津教会。

﨑津(さきつ)集落

 天草下島の南西部、羊角湾に面した一帯に、﨑津(さきつ)集落があります。おだやかな内海が広がるこの地域では、古くから漁業が営まれてきました。家々には、海に突き出た「カケ」と呼ばれる木組のテラスがあり、船の係留や漁具の手入れ、干物干しなどに使われています。また、密集した家屋の間には、通り抜けるための幅1メートル弱の細い小路「トウヤ(トーヤ)」があります。カケ、トウヤともに今も現役で使われており、﨑津集落の景観の大きな特徴になっています。
 天草へのキリスト教伝来以降、﨑津でもその信仰は広まり、守られてきました。地理的に入り組んだ場所で周辺地域との交流もなかったため、「島原・天草一揆」を知ることはなく、参戦しなかったことで処罰を受けませんでした。その後も教えは引き継がれ、明治時代に禁教令が解かれると領民のカトリックへの復帰が始まります。アルメイダ氏によって建てられていた﨑津教会は、1934(昭和9)年にフランス人司祭・ハルブ神父によって現在の姿になりました。﨑津教会はゴシック様式の建築で、白漆喰の内壁と畳敷きの床、やさしい光を落とすステンドグラスなど、和洋が調和した美しい教会です。教会内には付近の地域の名前を記した連絡箱が設置され、この教会が今も地域の人々の日常的な祈りの場であることを静かに教えてくれます。

﨑津の町並

﨑津の町並
ゆったりとおだやかな時間が流れる﨑津の風景。港近くの集落では、猫の姿もよく見かける。

海上のマリア像
海上のマリア像

海上のマリア像
﨑津に近い岬に、海に向かって立つマリア像。海を行き来する船人や漁師たちの海上での安全を願って、多くの人々の協力で建てられた。沈む夕日に照らされた姿も美しい。

丘の上で白く輝く大江教会。農民とともに生きた神父の姿を今に伝える。

 大江教会は、キリスト教解禁後、天草でもっとも早く造られた教会です。現在の建物は1933(昭和8)年にフランス人宣教師・ガルニエ神父が地元の信者と協力して建立したもので、東シナ海をのぞむのどかな丘の上に佇んでいます。天主堂は、長崎の浦上天主堂も手がけた鉄川与助氏による設計で、ロマネスク建築です。聖堂は天井が高く、鮮やかなステンドグラスも印象的です。ガルニエ神父は、この大江で農民と貧苦をともにしながら布教活動を続け、「パアテルさん(神父さんという意味)」と呼ばれて大変親しまれていました。天草ことばで気さくに話す温かい人柄にふれるため、『五足の靴』の文人たちも彼を訪ねてきたといいます。教会のそばには、フランス・ルルドの聖母像や泉を模した洞窟が、美しく再現されています。

大江教会 ルルドの泉

ルルドの泉

天草ロザリオ館

天草ロザリオ館

大江教会(一番上)の敷地内に造られたルルドの泉(二番目)。すぐそばに建つ天草ロザリオ館(一番下)では、当時のキリシタンが用いていた貴重な資料が展示されている。

おいしい、楽しい、美しい!天草のよかもんたち

1天草バラモン凧
江戸時代、ポルトガルの宣教師が伝えたとされる凧。朝日に舞い上がる鶴と、下部には亀が描かれたおめでたい図柄で、天草では男児の初節句に祝いの品として贈られる。

2天草エアライン
2000(平成12)年に、天草飛行場の開港とともに運航開始。現在は天草-福岡間、天草―熊本間を結んでいる。愛らしいイルカのデザインで、世界中にファンが多数。天草では身近な交通手段としても親しまれている。

3天草南蛮手まり
鮮やかな色合いが美しい手まり。天草四郎が悲運の最期を遂げた際、その恋人であった路香(みちか)が四郎を想いながら作ったのが始まりと言われている。

4イルカウォッチング
天草の名物の一つにもなっているレジャー。漁船やクルーザーで沖合に出て、ミナミハンドウイルカの群れを見ることができる。

5天草土(どろ)人形
300年近い歴史があると言われる天草土人形。もともとは子どもの成長を願うものだった。女性が子どもを抱いた人形は、マリア像になぞらえたもの。

6赤巻き
スポンジ生地に餡をぬって巻き、赤い求肥餅で巻いた郷土菓子。漁師が大漁を願って作ったもので、縁起が良い赤色から現在は祝いの席でも供される。

7杉ようかん
1790(寛政2)年、琉球王の使節団が嵐にあい、漂着した﨑津集落で住民に助けられたお礼として伝えた菓子。天然の防腐剤として杉を使用し、しっとりと素朴な味わいが魅力。

8車えび
古くから養殖が盛んで、全国的にも生産量が多い車えび。地元では鮮度の良い、甘みたっぷりの味わいを楽しむことができる。

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