掲載:2013年 vol.14
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会津富士加工株式会社 取締役社長 松永 茂さん (写真左) 営業担当 神田 隆弘さん (写真右) 完全閉鎖型植物工場における高品質野菜の製造をはじめ、ウエハー(半導体基盤)製造装置の部品を製造。昨年5月には、消費者に安全な食品を届けるための国際基準ISO22000を取得。今回紹介する高機能野菜シリーズ「ドクターベジタブル」のレタスの量産・販売に成功し、高い注目を浴びている。 |
透析を受けている方や腎臓病の患者さんにとって、カリウムを豊富に含む生野菜は「たっぷり食べたいけれど難しい」とされる食材でした。しかし昨年10月、驚くほどの低カリウム値を実現したレタスが販売されたのです。
低カリウムレタスの開発・生産・販売を実現したのは、福島県の会津若松にある会津富士加工株式会社。もともと半導体の製造を行っていましたが、製造拠点が海外へ移ったことでクリーンルームが不要となり、新たな用途を模索する中、「水耕栽培」というキーワードに出合ったのがきっかけでした。しかし会津若松は、農業を営む人も多い地域。農家と同じ季節に同じ作物を作ることは、手間や設備コストを考えると価格が上がり、市場で競争できないことを意味しました。そこで、通常の野菜がもつ苦味やえぐみが苦手な子どもたちのために、甘い野菜を作ることで、農家との共存共栄を目指したのです。まずはフリルアイスという品種のレタスからスタートし、試食のため子どものいる社員にも持ち帰ってもらう日々。「ある日、1歳半の子どもがレタスをバリバリ食べているという電話があったんです。感動しましたね」と社長の松永さんは話します。
この成功をきっかけに、今度は生野菜を制限している腎臓病の患者さんのために、低カリウム化を研究。通常のリーフレタスの8分の1のカリウム量を実現しました。「農薬を使用せず、衛生管理を徹底している点でも、安心してお召し上がりいただけます」と営業担当の神田さん。また、食事を共にする患者さんのご家族にとっても、同じ食材を食べられるうれしさがあります。シャキシャキのみずみずしい食感と甘さは、冷蔵庫で2週間保てます。これからの展開について、松永さんは話します。「今は弊社でのみ製造を行っていますが、今後は協力会社を募る予定です。より新鮮で安全な野菜を、全国各地で安定的にお届けしていきたいと考えています」。