透析を受けながら活躍する人々

掲載:2018年 vol.34

工藤 彰洋さん
透析を導入することになり、つらいことや苦しいこと、失ったものも多かったという工藤さん。
「それでも得たものは大きいです。私の経験をより多くの方に伝えていくことが、大切な役割の一つだと思っています」。

苦しさや悩みを経たからこそ
得た気付きが、
とても貴重だと感じています。

工藤 彰洋さん

苫小牧工業高等専門学校 創造工学科 電気電子系 准教授
苫小牧腎友会 会長

工藤彰洋さん
1979年、北海道函館市生まれ。音楽から楽器(特にシンセサイザー)の設計に興味を持ち、函館の工業高校を卒業後、新潟県の長岡技術科学大学へ進学。そのまま本州での就職も考えていたが、お父様の近くに住むため、北海道で教員になることを決意。大学院博士課程まで進学する。26歳の時、腎生検で膜性増殖性糸球体腎炎と診断される。その後、苫小牧工業高等専門学校に教員として就職。3年目に多忙から体調を崩し、その3年後に血液透析を導入。現在も教員を続けながら、腎臓病や透析について多くの人に知ってもらうため、苫小牧腎友会の活動にも参加。会長も務めている。

将来的に透析を導入すると聞いた時、
ショックでどうすれば良いかわからなかった。

 現在、北海道苫小牧市にある高等専門学校に准教授として勤めています。もともと函館の生まれで、地元出身の有名アーティストの影響からバンドを始め、楽譜が読めたのでキーボードを担当していました。そうするうちに音楽の演奏だけでなく、シンセサイザーなどを設計してみたいと思うようになったんです。そこで工業高校へ進学。さらに新潟県の長岡技術科学大学へ進学しました。
 大学1年生の頃、健康診断で尿たんぱくや血尿が出ているという結果が出ました。4年生で受けた精密検査では、クレアチニンの値がほんの少し正常値よりも高いぐらいで特に自覚症状もなく、そのまま修士課程の2年が過ぎていきました。博士課程に進み、研究論文の内容が世界を意識したものに変わり、2年生で海外発表を行うようになると毎日が大変忙しくなりました。徹夜で研究をしたり、海外発表のために英語のスピーチの練習もしていましたね。本当にハードな日々で、知らないうちに相当疲れが溜まっていたのだと思います。
 博士2年目で、翌年の就職を見据え「一度しっかり健康診断をしておこう」と考えて受けた検査で、血液中の赤血球のゆがみが見つかり、それが典型的な腎臓病の現象だったことから腎生検を受けたところ、膜性増殖性糸球体腎炎という珍しい病気だとわかりました。比較的若い年齢でかかる病気であること、食事制限が必要なこと、将来的には透析の導入を検討していくことなどを医師が教えてくれましたが、もうショックが大きすぎて、何がどうなっているのか、この後どうすれば良いのかわかりませんでした。
 博士課程の3年を終える頃、今勤めている苫小牧の高等専門学校で、教員に欠員が出て、就職が決まりました。体調は落ち着いていましたが、3年目に担任を受け持つことになり、想像以上に忙しくなると、服用していたステロイドで尿たんぱくが抑えられなくなってきました。ステロイドの量を増やしても改善されず、その3年後には腎機能が一般の人の3割にまで落ち込みました。父や叔母が生体腎移植を申し出てくれましたが医師の判断で2人とも移植ができず、自分が想像していた以上に早く透析導入をすることになったのです。
 実際に透析を始めたのは34歳の時です。半年ほど前から体のむくみはひどく、味覚障害といったいわゆる尿毒症の症状が出ていました。8月に学校の改築に関わる引越し作業をしている時に、疲れとストレスで倒れ、そのまま導入することになりました。治療が始まると、先ほどの症状はすぐに改善され、もっと早く始めておけば良かったと思うほどでした。
 透析歴は今年で5年目になります。学生時代から今まで、先生や職場の方々、家族、友人など多くの人が私を理解し支えてくださいました。周りの人たちの手厚いサポートがなければ自分は自分でいられなかったし、1人では元気も出なかったはずです。仮定の話をしますが、「子どもの頃のままの元気な自分」と「今の自分」のどちらかの人生を選べるとすると、「今の自分」を選びます。健康も大切ですが、苦しさや悩みから得た気付きの方が、私にとってはかけがえのないものなのです。
 これからも人生は続いていきます。大変なことも経験するでしょう。でも、気付いたことを大切に胸に刻んで、これからは同じ透析患者さんはもちろん、多くの方に透析について理解していただける取り組みをしていきたいです。
工藤彰洋さん

工藤さんは料理が得意で、積極的に自炊もするそう。食物繊維が免疫に良い影響があるという研究結果を知り、積極的に取り入れるようにしている。「禅寺の精進料理なども薄味ですが大変おいしいですね」。

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