個性あふれる美をめぐる
岡山・大人時間

掲載:2016年 vol.25

倉敷美観地区

この夏、新たな旅のテーマにおすすめしたいのが、個性豊かな美の世界をめぐる「大人ならではの贅沢な時間」。 舞台は晴れの国・岡山です。
今回は、「歴史ある町並み」「島と水辺のアート」「注目の美術館」の3つのコースで、ゆったりと流れる大人時間への旅にご案内します。

倉敷美観地区
昔ながらの建物が立ち並ぶ、倉敷川。川舟でめぐることもでき、観光客に人気。

大人時間1 歴史ある町並みをそぞろ歩き

 岡山県には、歴史を感じさせる古い町並みを現代に残している地域があります。倉敷市にある「倉敷美観地区」もその一つです。
 倉敷川を中心とする一帯は早くから干拓による田地の開発が進められており、1600(慶長5)年に備中国奉行領になったことを機に、松山藩の玄関港として上方への物資の輸送中継地となりました。その後、倉敷が幕府の天領(直轄領)に定められ、倉敷代官所が設けられます。これ以降、新田開発による農地が増加し、綿花の栽培による商工業が発展したことで主に備中国の物資の集散地となるなど大いに栄え、周辺地域から多くの人々が集まりました。
 当時、物資の輸送には船も使われていました。潮の干満を利用して、倉敷川には多くの船が航行し、川沿いには塗屋造りの町家や白壁土蔵造りを中心とする町並みが形成されていきました。この一帯は現在も当時の風情を残しており、「倉敷川畔伝統的建造物群保存地区」の名称で、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。「大原家住宅」などの豪商の旧邸宅をはじめ、三楽会館(旧倉敷郵便局)やルネサンス風建築の旧中国銀行倉敷本町出張所など、江戸時代から明治時代までの建築も多く建ち並んでいます。

地図 旧中国銀行倉敷本町出張所

旧中国銀行倉敷本町出張所

倉敷アイビースクエア

倉敷アイビースクエア

倉敷美観地区では、江戸から明治・大正時代に建てられた風情あふれる建築物が、今も当時の面影をそのままに大切に守り受け継がれている。

宿場町として繁栄した町並みを、
個性豊かなのれんが彩る。

 岡山県の北部に位置する真庭市勝山。古くは勝山藩二万三千石の城下町であり、出雲街道の宿場町として栄えました。白壁や格子窓の商家や民家、なまこ壁の土蔵といった伝統的な建造物が並び、城下町のたたずまいを残す古い町並みは、1985(昭和60)年に県下で初めて「町並み保存地区」に指定されました。
 現在は、日本酒の酒蔵や古民家、蔵を活用したカフェやギャラリーが軒を連ね、古き良き伝統と新しい文化が融合した雰囲気を楽しめます。また、各建物の軒先に個性豊かなオリジナルの暖簾が掲げられることから「のれんのある風景」としても有名で、ノスタルジックな趣が町全体を包みこんでいます。平成21年度「美しいまちなみ大賞」(国土交通大臣賞)を受賞するほか、風光明媚な歩道などがある地域として「遊歩百選」にも選定されています。

勝山町並み保存地区
勝山町並み保存地区

勝山町並み保存地区
昔ながらの旧家や武家屋敷、酒屋、土蔵など、古い建物の良さを現代とうまく融合させ、新たな地域の魅力を生み出している。

石州瓦とベンガラ色の外観で統一された、
豪奢な町並みが整然と続く吹屋。

 岡山県の西部、高梁市成羽町の吹屋地区は、赤胴色の石州瓦とベンガラ漆喰壁の見事な町並みで知られています。
 吹屋は、江戸中期頃から幕領地として鉱山町へと発展。幕末から明治時代にかけては、銅鉱とともにベンガラ(酸化第二鉄)における日本唯一の巨大産地として栄えました。当時ベンガラは、主に美術工芸用の磁器の絵付けや漆器、神社仏閣の外壁塗装に多用されたといいます。
 豪商が財にあかせて建てた豪邸は、全国各地に見ることができますが、吹屋の特異な点は、個々の屋敷が豪華さを纏うのではなく、旦那衆が相談の上で石州(今の島根県)から宮大工の棟梁たちを招き、町全体を統一された構想の下に建てられたということです。これは、当時としては驚くべき先進的な思想にあったといえるでしょう。山間に忽然と存在する重厚な商家の町並みが、今も往時の繁栄を物語っています。
 吹屋集落は、町並保存地区を中心として1974(昭和49)年に岡山県の「ふるさと村」に指定されました。また、1977(昭和52)年には岡山県下で初めての国の重要伝統的建造物群保存地区に選定。日本最古の木造小学校「旧吹屋小学校」や旧片山家住宅(江戸時代後期に建てられた豪商の邸宅)、西江邸(幕府代官御用所)などの見どころがあり、現在は備中神楽や渡り拍子など伝統的祭事の保存伝承も積極的に行っています。

※旧吹屋小学校は現在保存修理工事中です。(平成32年3月末まで)

吹屋ふるさと村

吹屋ふるさと村
吹屋の町並みの中を走るクラシックなボンネットバス。運行は春と秋の期間限定で、観光で訪れる人々に大人気。

高梁市商家資料館(池上邸)

高梁市商家資料館(池上邸)
古い商家が並ぶ本通りで、ひときわ目をひく池上邸。享保年間に小間物屋として創業し、その後両替商や高瀬舟の船主などを経て醤油製造で財をなした豪商の家。現在は、無料休憩所として公開している。

西江邸

西江邸
ベンガラの原料となるローハとベンガラを生産していた豪農商・西江家の邸宅。全国的にも貴重な歴史的文化建造物。

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