おもてなしの星を集めて
城崎・香住の旅

掲載:2013年 vol.15

城崎・香住の旅
大谿川に沿って並ぶ美しい柳。南へ進むと木屋町通りからは桜並木に変わり、春にはちがった風情が楽しめる。川にいくつも架かる橋梁も、歴史を感じる佇まい。

今年2月、フランスのミシュランが発行する「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で2つ星を獲得した城崎温泉。
「豊かな自然と人々との暮らしが融合した、日本ならではの生活様式美とおもてなしの心があらわれた、素晴らしい街である」と認められました。
今回は、世界が賞賛する日本屈指の温泉街の魅力を訪ねて、城崎とお隣の町・香住を旅します。

 平安時代から続く温泉街で、1300年の歴史を誇る城崎温泉。温泉の湧出にまつわる伝説はさらに時代を遡ります。最も古いものでは、時の帝・舒明天皇(629年)の頃に、けがをしたコウノトリが傷を癒していたのを見かけたことから発見したという話が残っています。また、717(養老元)年から720(養老4)年に道智上人が難病の人々を救うために当所鎮守四所明神に祈願を込め、明神の神託を得て千日の間八曼陀羅を唱えたところ、温泉が湧き出たとも言い伝えられています。
 源泉は毎分150リットルの湧出量を誇り、その温度は約81度。ナトリウムやカルシウム、塩化物を豊富に含み、肝臓や血圧の改善に良いとされています。
 温泉街の中央には大谿川(おおたにがわ)が流れ、川べりの美しい柳も見どころの一つです。大谿川にはいくつもの橋梁がかかり、2006(平成18)年には兵庫県の景観形成重要建造物に指定されています。

7つの外湯、遊技場、お土産選び。
温泉街ならではの楽しみを満喫。

 城崎温泉の大きな特徴は、7つの「外湯」があることです。外湯とは、宿泊施設の中にある浴場を「内湯」と呼ぶのに対して、日帰りの公衆浴場を指す言葉。城崎温泉以外では、山口県の俵山温泉や青森県の温湯温泉の温泉街にもあります。外湯は、城崎最古の湯と言われる「鴻の湯」をはじめ、「さとの湯」「地蔵湯」「柳湯」「一の湯」「御所の湯」「まんだら湯」の7つで、それぞれ異なる浴場や露天風呂などが楽しめます。中には洞窟風呂(一の湯)や樽の露天風呂(まんだら湯)などもあり、子どもたちにも人気です。
 夕暮れ時になると、宿に着いてひと休みした宿泊者が、浴衣に下駄という姿で外湯をめぐり始めます。カラリコロリと通りに鳴り響く下駄の音は、温泉街ならではの風情を感じさせます。以前の浴衣は、白地に宿の名前などが記されたものが主流でしたが、現在ではやさしい色合いの華やかな浴衣も多く、女性にはこちらが選ばれているようです。

温泉街の街並み。

温泉街の街並み。整備されながらも、昔ながらの景観が守られていて美しい。蕎麦を出す店や、土産物屋が軒を連ねる。

城崎温泉駅

一枚板に駅名が書かれ、その下にはのれんがかかる「城崎温泉駅」。駅前には、温泉街の宿を巡るバスがあり移動も便利。

城崎温泉の源泉

城崎温泉の源泉。近くには温泉卵を作れる場所もある。

さとの湯

城崎温泉駅を出てすぐ近くにある、外湯の一つ「さとの湯」の足湯。多くの人が訪れ、電車の待ち時間などにひと休みしていく。

温泉街の街並み。 麦わら細工 さとの湯 遊技場
 外湯に入り、夕食を食べた後の楽しみは、夜の街歩きです。城崎の街は、朝が早い一方で、夜遅くまで開いている店も多く、一日を充分満喫できます。夜7時頃からの開店が多く、幅広い世代に人気なのが遊技場です。昔ながらのレトロな店内では、射的やスマートボール、パチンコが楽しめ、子どもだけでなく大人も思わず夢中になってしまうほど。店員の方も遊び方を丁寧に教えながら、盛り上げます。中には「小さい頃に行った遊技場が、まだあると聞いて」とやってくるお客さんも。子どもにとっては新鮮で、大人には懐かしい時間がゆったりと流れていきます。
 街歩きで、もう一つの楽しみがお土産選びです。城崎には素晴らしい伝統工芸があり、特に「麦わら細工」が有名です。これは、江戸時代に因州(鳥取県)から湯治に来ていた、わら細工職人が作り始めたとされ、300年近くもの歴史があります。1年以上寝かせた麦わらを赤・青・黄・緑などに染め上げ、編み込んだり桐箱などに貼り付けるものですが、今では城崎にしか残っていません。でき上がった時は色鮮やかですが、5年10年と年月を経るほどに色がこなれ、味わい深い表情へと変わっていくのも魅力です。
 日づけが変わる頃、街はようやく寝静まります。しかしまた静かに食事の準備の音や、朝湯に出かける地元の人たちのあいさつが聞こえてくれば、もう朝。昨日と同じ通りを歩けば、出会った人が「どこへ行ってきなさったん?」と声をかけてくれます。温泉街でありながら地域の日常と近く、地元の人々と観光客のふれあいが多いのも、城崎ならではの楽しさです。

一の湯

外湯の一つ「一の湯」。温泉医学の祖・香川修徳が「海内第一泉」(日本一)と記したことから命名された。桃山様式の外観は、城崎を代表する景観の一つ。

遊技場

夜になると賑わう遊技場。懐かしい遊びに、大人も子どもも真剣。

城崎に伝わる麦わら細工

城崎に伝わる麦わら細工。1本の麦わらをグラデーションに染め上げることで、繊細な色を表現する。

お土産には手ぬぐいも人気

お土産には手ぬぐいも人気。中央のゆかたの女性の柄は、一時はなくなったデザインで、現在復刻されている。

ページトップへ