港町に響く美しい音色
神戸の音風景

掲載:2013年 vol.14

緑豊かな山々を背に、穏やかな内海に向かって開けた美しい街・神戸。
古くは平清盛によって都が置かれ、その後1868(明治元)年には港が設置されました。
開港を期に海外の人々や文化、物資が入り、神戸は東洋最大の港湾都市へと発展。
受け入れてきた多彩な文化の中には、もちろん音楽もありました。
港町を象徴する芸術の一つ「ジャズ」が、日本で初めて神戸に迎えられ90年を数える今年。
今回は「音」をテーマに、風光明媚な自然に囲まれた歴史ある街を巡ります。

暑い夏を楽しむ日本の知恵。
洗練されたデザインにも注目。

 夏の風物詩、風鈴。風を受けて奏でる軽やかな音色は、湿度の高い真夏の日本で、冷房などない時代から “涼しの風情”を届けてきました。風鈴は、もともと寺のお堂に吊り下げられていた青銅製の風鐸(ふうたく)が起源。当時、強く吹く風が流行病や悪い神を運んでくると考えられていたことから、邪気除けの意味でつけられており、この音が聞こえる範囲は聖域であるので災いが起こらないとされていました。時代の流れとともに、菌が繁殖しやすく病も広まりやすい夏の魔除け道具、つまり「暑気払いのための器具」として定着していきます。
 ガラスの風鈴が製造されるようになったのは18世紀。古代のシルクロード経由の色ガラスではない、無色透明ガラスの製法がオランダ経由で日本に伝わると、19世紀には江戸でガラス細工が盛んになり、江戸時代末期にはビードロ製の吹きガラスで作られた風鈴が流行しました。その後、全国へ広まった風鈴。神戸では近年、甲山ガラス工房で「神戸ふうりん」が作られ、南京町などに並ぶほか、全国から900種類の風鈴が集まる川崎大師風鈴市にも出品されています。海をイメージした優しい青色の模様をはじめ、レトロな美しさの乳白色も人気で、新たな神戸の名品として注目が高まりつつあります。

バイオリン工房三宅
甲山ガラス工房

カラフルな色ガラスの粉。組み合わせ次第で、デザインは無限大に。

甲山ガラス工房

風鈴を鳴らす舌(ぜつ ※芯になる部分)を作る様子。

甲山ガラス工房

甲山ガラス工房では、13年前からこの地で隅野さん父娘がガラス作品を製作している。

甲山ガラス工房

風鈴以外の作品も多数ギャラリーに並ぶ。

人々の祈りに寄り添う、温かくも厳かな音色。

 神戸の中心部には、寺社仏閣をはじめ、キリスト教の教会やイスラム教のモスクが集まっています。一つの街でこれほど多くの宗教施設が見られるのは珍しいことで、神戸が古くからさまざまな国の人々を受け入れ、その文化を守り育んできたことが分かります。
 祈りを捧げる場にも、歌や音楽は欠かせません。神聖なその音色は、日々の喜びや悲しみをやさしく受け止め、心を穏やかに導いてくれます。下山手にある神戸栄光教会には、世界的にも最大級のパイプオルガンが設置されています。1995年の阪神淡路大震災で大きな被害を受けた教会堂を修復する際、フランスのオルガン工房・ケルン社に製作を依頼。バロックの装飾が施された美しいパイプオルガンは、教会建築に溶け込んで、聞く人を包み込むようにやわらかな音色を響かせます。また歴史を感じさせるレンガ造りの外観には、40メートルの尖塔の最上部に、吊り鐘を見ることもできます。大切な記念日はもちろん、近年起こった大震災の日にも追悼の鐘が鳴らされるなど、さまざまな気持ちをあらわす際に用いられ、厳かで温かい響きに、街全体が包まれます。

神戸栄光教会

バロック様式の重厚な装飾に目を奪われる。

神戸栄光教会

モダンなライトが印象的な神戸栄光教会の大礼拝堂。十字架の上からは自然光が注ぐ。

神戸栄光教会

ケルン社のパイプオルガン。パーツの一つひとつが美しい。

神戸栄光教会

教会の尖塔に吊るされた鐘。刻まれた数字は、2004年に鐘が掲げられたことを示す。

世界有数の港を行きかう船の汽笛に足を留める。

 神戸港は、1868(慶応3)年の開港から日本を代表する港湾とされてきました。現在も国内における主要な国際貿易港(五大港)の一つで、日本三大旅客港にも数えられています。太平洋戦争の敗戦にともなって一時接収されますが、返還後もアジア最大のハブ港として70年代の高度成長期を支えました。近くには、世界最大級の人工島ポートアイランドや六甲アイランドを建設。またメリケンパークや神戸ハーバーランドなど商業施設を開発するほか、沖合いには神戸空港を開港し、日本のウォーターフロントの先駆けとなってきました。阪神淡路大震災で大きな被害を受けるものの、力強く復興を果たし、今では泊地内に有する多くの港や突堤に、国内外の船舶が次々と離着岸しています。風の流れに乗って、街や住宅地にまで渡るこれらの船の汽笛は、神戸を愛する人々には親しみ深く、初めて訪れる旅人の心をも魅了することでしょう。夜には山々から海にかけて広がる夜景が美しく、今では「1000万ドルの夜景」と称されるほど。地上の星がきらきらと瞬くたび、軽やかな音色が聞こえてくるようです。

水木しげるロード

メリケンパークの風景。海と山、空と街が一度にのぞめる贅沢なひととき。遊覧船で、神戸港から明石大橋までを巡るクルーズも人気。

ページトップへ