港町に響く美しい音色
神戸の音風景

掲載:2013年 vol.14

神戸の音風景
1910(明治42)年に、ドイツ人貿易商ゴッドフリート・トーマス氏が自宅として建てた「風見鶏の館(旧トーマス住宅)」。色鮮やかなレンガの外壁と尖塔の風見鶏は、北野異人館のシンボルとなっている。国指定重要文化財。

緑豊かな山々を背に、穏やかな内海に向かって開けた美しい街・神戸。
古くは平清盛によって都が置かれ、その後1868(明治元)年には港が設置されました。
開港を期に海外の人々や文化、物資が入り、神戸は東洋最大の港湾都市へと発展。
受け入れてきた多彩な文化の中には、もちろん音楽もありました。
港町を象徴する芸術の一つ「ジャズ」が、日本で初めて神戸に迎えられ90年を数える今年。
今回は「音」をテーマに、風光明媚な自然に囲まれた歴史ある街を巡ります。

エマニュエルさん

北野異人館周辺で人気のレストランオーナー・エマニュエルさん。おすすめの見どころスポットも教えてくれる。

萌黄の館

1903(明治36)年にアメリカ総領事ハンターシャープ氏の邸宅として建築された「萌黄の館」。

異人館周辺

異人館周辺には、音楽を奏でる人物の彫刻が数多く設置され、楽しい雰囲気。

日本で初めてジャズが生まれた港町・神戸。

 神戸で、日本初のジャズバンドが誕生したのは1923(大正12)年。宝塚少女歌劇団(現・宝塚歌劇団)のオーケストラ出身であった井田一郎氏をリーダーに、「ラッフィング・スター・ジャズバンド」が結成されたことに始まります。その後、神戸の港周辺や中心街をはじめ、多くの外国人が移り住んだ北野には、ジャズを聞かせる飲食店やサロンが開店。連日、大いに賑わったといいます。後年勃発した太平洋戦争の間も、「ジャズ恋し早く平和が来れば良い」と川柳に詠まれるほど日本人の間で浸透し、戦後は多くの元陸海軍軍楽隊員がジャズ畑へ転向するほど根強い人気がありました。
 神戸を中心とする阪神間には、今も本格的なジャズが楽しめるレストランやバー、喫茶店があり、全国からジャズファンが訪れます。中でも、創業40年以上を数える「ジャズライブ&レストラン ソネ」は、歴史あるジャズレストランとして名高く、古くから多くの人に愛されてきた名店。シンガーやプレイヤーにとっては憧れの舞台であり、新しい世代が羽ばたく場所としても、日本のジャズシーンを支えています。
 他にも、神戸では1981(昭和56)年から毎年秋に「神戸ジャズストリート」を開催。山手の異人館へと続く北野坂を中心に、三宮やトアロード周辺のレストランや教会、ホテルなどで、国内外のアーティストが演奏を披露。ジャズの魅力を広く伝えています。

ジャズライブ&レストラン ソネ
ジャズライブ&レストラン ソネ
ジャズライブ&レストラン ソネ
ジャズライブ&レストラン ソネ
ジャズライブ&レストラン ソネ

三宮から北へ向かってほど近く、北野坂の入り口にそっと佇むソネ。歴史ある建物が醸し出す穏やかな空気と、包み込むような音の響きがファンの心を掴む。

職人の手によって守られてきた
美しく親しみ深い音風景。

 音楽活動が盛んな関西にあって、神戸にはさまざまな楽器の工房があります。バイオリンやギターなどの弦楽器もその一つ。今では演奏者の減少によって、日本でも製作者が随分減りましたが、専門家の工房には一日に何人ものプロやアマチュア演奏家が訪れ、楽器の製作や修理を依頼していきます。バイオリンの場合、1本の製作に必要な月日は、なんと60日。ニス塗りと乾燥だけで2ヶ月を要するといいます。何十年もの修業を積んだ熟練の職人の手によって、数え切れないほどの工程を経てでき上がる、世界に一本だけのバイオリンはなんとも贅沢な逸品です。最近はクラシック以外にジャズ演奏でも用いられ、新たな音楽の世界を広げつつあります。

バイオリン工房三宅

「バイオリン工房三宅」にて。毎日一度ニスを塗り、これを2ヶ月間くり返す工程。

バイオリン工房三宅

工房の全景。

バイオリン工房三宅

表板を削る三宅さん。熱中すると10時間以上工房にこもることも。

バイオリン工房三宅

温度や湿度管理も徹底。

 神戸には、歴史あるオルゴールの音色が楽しめる「六甲オルゴールミュージアム」があります。オルゴールは18世紀末にスイスの時計職人が発明し、19世紀を通じて改良を重ね、家具調の大型のオルゴールが作られるようになりました。第二次世界大戦後、日本でも小ぶりのものが製造されるようになり、日本人ならではの繊細さと高度な技術で、品質の高い製品が大量に作られます。
 一方で、神戸には1900年代から多くの外国人が移住しました。当時欧米で人気最盛期を迎えていたオルゴールの音色は、遠く日本の地で故郷を懐かしむ彼らの心を癒していたかもしれません。「六甲オルゴールミュージアム」では、今から約1世紀前に製造されたオルゴールの音色を楽しむことができます。また、日本でも数少ないオルゴール製造の施設として、神戸で唯一、その美しい音色を生み出しています。

六甲オルゴールミュージアム 1904年頃にドイツで製造されたディスク・オルゴール ロッホマン“オリジナル”172型。立派な装飾にも目を奪われる。
六甲オルゴールミュージアム

ミュージアムでのコンサート風景。レギュラーコンサートの他、特集コンサートも実施。

六甲オルゴールミュージアム

1938年ベルギー製の自動演奏オルガン“ケンベナー”。

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