掲載:2013年 vol.13

ロングインタビュー透析医療と患者の未来を考える
社団法人 全国腎臓病協議会
宮本 髙宏 会長

大学卒業後は、小学校教師として勤務。1982年に血液透析を導入し、翌年から自宅で学習塾を開く。1999年、兵庫県腎友会専従職員、同年に同会事務局長に就任。2005年に全腎協理事となり、2009年に会長に就任。
社団法人 全国腎臓病協議会とは
社団法人全国腎臓病協議会(略称:全腎協)は、すべての腎臓病患者の医療と生活の向上を目的として1971年に設立された、腎臓病患者の患者会組織。設立以来、全国の腎臓病患者の代弁者として行政・医療団体へ要望を申し入れるなど、医療や福祉に関する問題提起や政策提言を行う。また、47都道府県の腎友会とともに、市民を対象とした腎臓病に関するシンポジウムを各地で開催するなどの社会啓発活動も行っている。

宮本会長ご自身の、これまでの透析生活や、
全腎協(腎友会)との出合いを教えてください。

 私は1982年に透析を導入し、昨年9月に30年を迎えました。当時は末期の腎不全で、もちろん肉体的にもつらい思いはしましたが、それよりも「透析生活に入ると、人生終わりなんじゃないか」ということばかり考えて、精神的な苦しみの方が大きかった気がします。実際その頃は、透析治療自体が身体的な苦痛を伴うものでした。「これが毎回続くのか」というつらさと不安でいっぱいでしたが、おかげさまで合併症もなく、今日まで過ごさせていただいています。透析治療そのものはもちろん、ドクターをはじめ医療関係者の方々に、心から感謝しています。
 私が腎友会に入会したのは、透析を始めてから1ヵ月ほど後でした。そこで、透析に関わる本や、全腎協の歴史に関する資料を丹念に読み込みました。思えば、精神的に落ち込んでいた反面、若かったので好奇心も旺盛だったのでしょう。そして、透析初期の治療方法や社会状況を知り、自分は恵まれていると感じました。さらに腎友会での人との出会いにも、大きな影響を受けました。自分以外の患者さんの思いを聞くことが、勇気や共感につながりましたね。また、あるドクターから「君は若くて大変だけど、医学はまだまだ進歩するから、がんばって。患者さんががんばることが、医療の発展につながるんだ」と言われたことも、前向きに生きようと決心するきっかけになりました。私はもともと小学校の教諭で、透析導入をきっかけに退職したのですが、これをきっかけに学習塾を開いたのです。


全腎協が設立された趣旨と目標を教えてください。

 全腎協は、1971年に設立されました。透析医療が国内で臨床化されたのは65年頃で、67年から保険適応になったのですが、それまで透析患者の負担は大変なものでした。透析によって延命はできるけれど、経済的な負担と、患者数に対する透析施設の絶対的な不足が、大きな問題だったのです。誰もが、末期の腎不全になっても透析を受けられる社会にしたいというのが、当時の切実な願いでした。そこで、以下の4つの目標を掲げて全腎協は設立されたのです。

1.透析医療を公費負担にすること。
2.透析患者を、身体障害者に認定すること。
3.人工腎臓を増やすこと。
4.透析患者ではない腎臓病患者の治療費の助成を実現すること。

 設立当初の目標は、ほぼ達成されましたが、時代とともに社会状況や患者さんの構成が大きく変化した今、私たちにはまた新たな役割が生まれてきたと思っています。


透析患者さんをとりまく環境や医療の形はどのように変わってきていますか。

 30年前に私が透析を始めた頃、患者の平均年齢は45歳でしたが、今は67歳まで上がりました。また、患者数も当時の5万人から現在は30万人と、6倍に増えています。
 これが何を指すかと言うと、まず年齢を考えた場合、高齢化によって今後ますます患者さん自らの通院が難しくなるということです。さらに治療とともに、介護の必要も出てきます。生きるために透析が必要だけれど、通院できない。今は医療制度改革によって、長期入院も難しい。そうなると、透析治療と生活が一体化した施設を増やす必要性が出てきます。また、通院が難しい患者さんにとって、「遠隔治療」というのも今後一つの選択肢になってくるかもしれません。今の日本では、ドクターの対面治療が基本ですが、海外では透析施設には優秀な専門スタッフのみが常駐し、ドクターはセンター病院でしっかりと管理しているケースが多く見られます。これは、専門医不足に悩む地域に住む患者さんにも適応できる方法だと思います。
 もちろん、在宅治療も良いでしょう。以前と違い、今は個人に合わせて透析方法も選べるようになりました。在宅透析は、延命率が明らかに高いという治療効果から見ても、今後は確実に増えていくと考えています。


全腎協の今後についてと、患者さんへのメッセージをお願いします。

 全腎協が設立されて40年経った今、私たちは患者さんを取り巻く環境の変化をしっかりと見つめ、将来も見据えながら、協議会としてより良い医療と社会参加のための活動を続けていく必要性を感じています。
 それと同時に、私自身も患者の一人として感じるのは、これまでの医療や制度の発展は大きな財産として守りながらも、今後さらに患者個人が社会に関わっていく 必要性 があるということです。自ら透析について学び、「良い医療を受けたい」「もっと元気になりたい」と望む声を上げることで、医療者をはじめとする社会とコミュニケーションが生まれ、議論の場が生まれるのです。そうすれば、ますます医療や社会制度の質が高まるはずです。患者自身がボールを投げない限り、今以上に環境を良くすることはできません。自分の治療は、自分が主役。積極的にボールを投げかけましょう。また、こうした考えや活動を受け止めてくれる医療関係者が増えてくれることも切に願っています。
 それから、過去40年の中で、非常に厳しい条件から安心して透析治療が受けられることになったのは歴史的成果だと思いますが、その過程で、患者さん自身のモラルや社会への貢献について注目されているのも事実です。透析の医療費は、一人あたり年間平均500〜600万円。社会全体に支えられているということを患者さん自身もしっかりと見つめ、仕事や社会活動を通して周囲に貢献していくことが必要だと考えます。こうした社会との関わり方や心のありよう、将来に向けた透析治療そのものの考え方などについて、現在、組織内でも議論しています。今後、「憲章」のような形で発信していければと考えています。

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