知っておきたい「リン」の話 vol.5 腎移植という選択 その1 移植の長所

腎移植には2種類ある

 腎移植とは、手術で健康な腎臓を移植し、患者さんが再び健康な腎臓をもつことができる、腎不全の根本治療と言えるものです。
 腎移植には、亡くなった方の腎臓を使わせていただく「献腎移植」と、家族から腎臓を提供してもらって行う「生体腎移植」との2種があります。
 献腎移植は生前に日本臓器移植ネットワークに登録していた方の腎臓を移植するもので、あくまでも亡くなった方の善意によるものです。亡くなった方の臓器が自動的に移植に使われるという制度ではなく、日本ではドナー不足が続いており、実際に献腎移植を受けられる患者さんは年間150人ほど。患者さんの待機時間は16年にも及ぶのが現状です。

増えている「生体腎移植」

  献腎移植に比べ、日本で多く行われるようになってきているのは生体腎移植です。腎臓を提供できるのは、原則としては親、兄弟などの親族ですが、最近では夫婦間の移植も可能になりました。免疫抑制剤が進歩したおかげで、血液型が違っても移植を安全に行うことができるようになりましたし、従来は条件が悪いために提供できないとされていた高齢者や乳幼児、糖尿病、高血圧の方、がん治療後の患者さんでも腎臓を提供できるようになり、腎移植の間口は広がりつつあります。

腎移植の長所

 腎移植の技術は10年前と比べて飛躍的に進歩しており、移植した腎臓も長い期間、しっかりと働いてくれるようになりました。実際に腎移植を受けた患者さんは目に見えて体調が改善し、元気になります。慢性腎臓病(CKD)の重症度は5段階のステージ(病期)分類で表されますが、透析患者さんでは最も重い5であるのに対し、移植後の患者さんは3〜4程度に保たれ、それ以上重症化せずにすむことが多いのです。移植後に再び透析が必要になる患者さんは少なくなっています。
 もちろん、移植を受ける患者さんは血圧や血中脂質、糖尿病、骨粗鬆症などの慢性の病気を持っている方がほとんどですから、移植後もこうした合併症の管理は引き続き行わなければなりません。しかし、その治療は腎移植患者さんだからと言って特別なことではなく、一般的な内科でも受けられます。
  透析が週3回の通院が必要なのに対して、腎移植は、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)という面では優れた治療法だと言えます。私も特に若い患者さんには、できるだけ腎移植の途を探すように検討しています。実際に、腎移植では年齢の上の人が若い人に臓器を渡すことが多いのが特色です。
 一方、ドナーとして腎臓を片方提供した方は、その後の人生を残された腎臓1つで生きていかなければなりません。そのため、腎臓の負担が増すのではないかと言われて心配されています。しかし、少なくとも私の勤務する病院では、腎臓提供後、ドナーの健康が低下したり、腎機能が低下したことは経験がありません。
 一見、良いことずくめのように見える腎移植ですが、問題点もあります。次回はそのあたりをお話ししたいと思います。


> 次回は「腎移植という選択 その2 移植の問題点と将来の治療」について、掲載します。

監修者

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。

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