知っておきたい「リン」の話 vol.4 慢性腎臓病の合併症2 骨の健康

慢性腎臓病の患者さんは骨折に注意

 前回、人工透析を受けている方には「骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」が起こりやすいことをお話ししました。
 私たちの骨は、常に新しいものが作られ、古いものが吸収されるという新陳代謝を繰り返しています。慢性腎臓病の方に骨折が多い原因の1つとして、腎臓の機能が低下しているため骨の形成に必要な「ビタミンD」がうまく働かず、副甲状腺の働きの異常で骨の吸収が増えるという理由も考えられます。
 実際、透析を受けている方はどのくらいの頻度で骨折を起こすのでしょうか。慢性腎臓病の方の大腿骨骨折についての調査によれば、一般の健常者に比べ4倍以上も骨折しやすいということがわかっています。大腿骨骨折は、骨折のなかでも回復に時間がかかます。そのまま寝たきりになるリスクも高く、透析患者さんの日常生活の大きな妨げになります。

ロコモティブシンドローム予防が骨折予防に

 慢性腎臓病の方にとって、カルシウムやリンは、骨には必要ですが、血管に障害を起こしやすいという問題点があります。また、骨粗しょう症の薬は慢性腎臓病の方には容易に使えません。腎機能障害のある方には、使用が制限されている薬物が多いからです。
 近年、加齢による骨や筋肉などの障害を「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」と呼び、適度な運動によって予防していこうと提唱されています。透析患者さんについても、適度な運動で筋力や骨の強度を保つことが骨折予防になります。ただし、一度骨折した方については、転倒予防策も重要。専門家の指導の下、リハビリテーションをしっかり行うとともに、家のなかの段差をなくすなど、生活環境を整えることも大切です。
 イギリスでは10年ほど前から、骨折した透析患者さんを対象に、骨折再発予防への取り組みが社会的に行なわれ、成果を上げています。これは、老人内科の医師、看護師、理学療法士、作業療法士などがタッグを組んで、お薬での治療を行いながら、リハビリテーションや運動指導、栄養指導、生活習慣の見直しなどを行うものです。こうした取り組みを日本でも導入しようと、現在、モデル事業が行なわれています。

低栄養を防ぐことも大切


専門家とも相談しながら、適度な運動を続けていくことが骨折予防にもつながります。
 大腿骨骨折の原因のひとつに、「低栄養」もあると考えられています。「低栄養状態」とは、筋肉や骨を支えるだけの十分な栄養が摂れていないことを言います。そのために骨折しやすく、寝たきりになるリスクが高まるのです。
 慢性腎臓病の食事療法では、リンと塩分の摂取を制限され、味気ない食事を余儀なくされます。しかし、そのために食べる量が減り、低栄養になっては骨折のリスクが高まります。過度に食事制限をするのではなく、おいしく食べられることを優先し、高リン血症に対しては、リン吸着薬などのお薬を使ってコントロールしていくという方法が有用でしょう。

監修者

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。昨年の東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。
※今回の取材は、風間先生のご厚意で、ボランティアとしてご協力いただきました。

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