知っておきたい「リン」の話 vol.3 慢性腎臓病の合併症1 血管の健康

慢性腎臓病の合併症「CKD-MBD」

 人工透析を受けている患者さんが注意しなければならない合併症のひとつに、「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常」があります。英文の頭文字をとって「CKD-MBD」と呼ばれています。
 カルシウムやリンなど、体内のミネラルが正常に代謝されるためには、腎臓の働きが重要な役割を果たしています。慢性腎臓病の方では、腎臓の機能が低下していますので、ミネラルの代謝異常から、さまざまな問題が起こりやすいのです。骨をつくるべきリンやカルシウムが正しく代謝されないため、骨折しやすくなるのもその一つです。そのため、慢性腎臓病の合併症は長い間、骨の病気として考えられてきました。
 しかし、実際、この合併症の問題は「骨の病気」だけではありません。リンやカルシウムの代謝が原因で、血管がガチガチに固まってしまう「血管の石灰化」が起こることがわかってきたのです。動脈硬化が進むと、血管壁が厚くなって血液の通り道が狭くなりますが、そこに石灰化が加わると、一層、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高くなります。つまりCKD-MBDは、人の寿命にもかかわる問題なのです。

食事からのカルシウム、リン摂取との関係

 CKD-MBDの発症に関係すると言われているのが、カルシウムとリン。高リン血症は、カルシウムの代謝にも影響しCKD-MBDを引き起こす要因になると考えられているため、透析患者さんは日常の食事でリンの摂取を控えるよう指導されます。
 具体的な食事指導としては、タンパク質の一日摂取量を制限されることが一般的です。では、必要なタンパク質を制限して、その結果としてリンを低下させることがよいのでしょうか。過度な食事制限によりリンがコントロールされている状態は、必要な栄養素が十分摂取できない可能性があり、“ 低栄養状態 ” を引き起こしてしまう危険性があります。
 

高リン血症の管理は早期から


食事制限はあまり厳しくしすぎず、好きな食事を楽しみながら高リン血症を防ぐ工夫が大切です。
 透析患者さんが元気で長生きするためには、「血管の石灰化」を予防することは大切ですが、食事制限をあまり厳しく行なうことは、患者さんにとっても家族にとってもストレスがかかります。人間にとって、好きな食事を楽しめないことは、生活の質も低下してしまいかねません。好きな食事を楽しみながら、高リン血症に対しては、経口リン吸着剤などのお薬を使って、血中のリンの値を下げるという方法が有効です。こうすれば、食事を楽しみながらリン管理もでき、低栄養状態も防ぐことができます。
 血管の石灰化は一朝一夕に起こることではありません。しかし、一度石灰化してガチガチになってしまった血管はもとに戻ることはありません。ですから高リン血症の治療は、石灰化を予防するためにも、しっかり行なうことが大切です。

監修者

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。昨年の東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。
※今回の取材は、風間先生のご厚意で、ボランティアとしてご協力いただきました。

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