知っておきたい「リン」の話 vol.2 しっかり食べて、しっかり治療

制限の多い透析患者さんの食事療法

 透析を受けている患者さんには、右の表のようにさまざまな食生活の制限があります。
 医師は、患者さんのご家庭での食事療法の結果を、検査値で見ています。たとえば、水分は「できるだけ少なく」と指導されますが、とりすぎれば体重が増加するのですぐにわかってしまいます。しかし、糖尿病が原因の場合は、のどが渇きやすいという病気の特徴があるので、つい水分をとってしまうのもしかたない面もあります。このように、制限の多い食事療法を継続するのは、患者さんにはつらいことであり、なかには自暴自棄となり、やけを起こして悪い食生活におちいってしまう方もおられます。

患者さんが楽しめる食事を提案したい

 本来、食事は栄養をとるためだけにあるのではありません。家族や友人とともに楽しく食卓をかこみ、おいしい食事をとることは人生の喜びでもあり、食事はコミュニケーションツールでもあります。私たち医療者は、患者さんに、健康によい食事の情報提供を行う義務がありますが、それをどうご自分の生活に取り入れるかは、ご自身で判断していただくことです。食生活は、患者さんのライフスタイルそのものにかかわることだからです。
 患者さんに対して栄養指導を行う管理栄養士も、どうすれば透析患者さんが食生活を楽しめるかを提案する フード・コーディネーターであることが理想です。たとえば、同じリン摂取量におさえながら、もっとおいしく食べられる方法や、健康によい食材をうまく使って食事を楽しむ方法など、医療者は、患者さんが楽しめる食事を「提案」する立場でありたいと思います。

過度の食事療法で「低栄養」に!?しっかり食べることも大切

 慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版(表)によれば体重50㎏の方の場合、1日に1350〜1950kcalをとることが必要です。しかし、時々、塩分やリンの摂取を控えようとするあまり、エネルギー量やたんぱく量が少なすぎる「低栄養」という状態の患者さんを見受けます。低栄養状態では活動する力もおとろえてしまい、場合によっては寝たきりになるなど、患者さんの生活の質の低下になりかねません。
 食事療法を守ることは大切ですが、食生活の楽しみも失わないようしっかり食べていただきながら、しっかり透析を行うことも大切だと考えています。リンの摂取が多くなりがちな方には、リン吸着薬などのお薬を上手に使いながらコントロールしていきます。
 患者さんひとりひとり、悩みも違えば、解決策も異なります。医療者は透析患者さんによりそって、食事療法の悩みを共有していきたいと考えていますので、気軽に相談してみてください。

監修者

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。昨年の東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。
※今回の取材は、風間先生のご厚意で、ボランティアとしてご協力いただきました。

過去の記事を見る

ページトップへ