知っておきたい「リン」の話 vol.1 高リン血症とは

リンは生物に必須のミネラル

 透析を受けている患者さんにとって、留意しなければならない栄養素に「リン」があります。リンは、卵黄や油揚げ、たらこやしらす干しなど蛋白質の多い食品に多く含まれています。また、ハム・ソーセージなどの加工食品には、「リン酸塩」というリンの化合物が使われており、これもリンの供給源になります。
 リンは生物が生きるのに欠かせないミネラルの一つで、骨や歯を造るのに必要な別名 骨のミネラル として知られています。また、細胞一つ一つの細胞膜を構成する成分でもあり、細胞がエネルギーを産生することにも関わっているなど、その働きは多岐にわたることがわかってきました。
 リンは太古から、人間にとって非常に貴重な成分でした。「ミネラルの宝庫」と言われる海水にも、人間の血液の1000分の1程度の濃度のリンしかありません。自然界の中で貴重なもののため、人間の体は積極的にリンを取り込もうとする構造になっています。そして、食品から摂取されたリンは、胃腸などの消化管から排せつされることなく、全て体内に取り込まれます。

過剰なリンは老化の原因に

 体に取り込まれたリンを、適正な量に調整して、余った分を排せつするのが腎臓の役割です。健康な腎臓であれば、血液中のリン濃度は正常値に保たれます。しかし、腎臓病の方、人工透析を受けている患者さんでは、リンの排せつがうまくできません。そのため、透析患者さんの血中リン濃度は高くなり、「高リン血症」となります。
 「高リン血症」はすぐに症状が出るようなものではなく、自覚症状がありません。しかし、長期的にはさまざまな合併症の原因になり、さらには老化そのものを進める要因になります。
 まだすべてが解明されているわけではないのですが、最近の医学では、リンは根本的に寿命や老化に直結するミネラルであると考えられています。人間の体に絶対必要ではあっても、多すぎれば細胞にダメージを与えるもの、という点ではコレステロールと同じ。そこで昨今、リンは「新たなコレステロール」と呼ばれるようになりました。
 現代では腎臓病の患者さん以外でも高リン血症の方が増えつつあります。人類は太古から、リン不足は起こり得ても、余るという状況は想定外でした。現代の豊かな食生活によってその状況が一変し、過剰なリンが健康にもたらす影響が徐々に明らかになってきたわけです。
 

食事とお薬で適切な管理を


リンの量を考えた食事は「アンチエイジング食」
粗食とは、“飽食”と反対にある“質素な食事”のこと。一汁三菜を基本に、お米や野菜を中心としたバランスの良い食事は、魚や肉を使った料理よりもリンの値が低く、アンチエイジングにもおすすめです。
 透析患者さんの高リン血症の改善策として最も望ましいのは、透析で十分にリンが排出できるように医療技術が改善されることです。現在の透析液はリン濃度0%に保たれ、極力リンを排出できるように工夫されていますが、それでも排せつしきれないのが現状です。
 患者さんの側でできることとしては、必要な栄養素を摂取した上で、リンの過剰摂取を控えることですが、現実的にはなかなか継続することは難しいものです。そこで、リン吸着薬というお薬で、体内のリンの量を調節することが重要です。
 透析中の方以外でも、健康管理のためにはリンの過剰摂取に注意したいもの。高カロリーで加工食品の多い食事では、リンの摂取が多くなります。あるアンチエイジング医療専門のクリニックでも、患者さんにリンの少ない食事を勧めているそうです。
 ただ、腎臓病の患者さんにとっては、食事療法は一生向きあっていくものです。中途半端に取り組んでリバウンドしても体にはよくありません。私はむしろお薬をきちんと飲んで、食事は「はめを外さない」程度の軽い気持ちで取り組むほうが長続きするのではないかと思います。
 

監修者

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。昨年の東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。
※今回の取材は、風間先生のご厚意で、ボランティアとしてご協力いただきました。

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