透析医療と栄養を考える 第3回 人生を楽しむために大切な心と身体の栄養

毎日のことだからこそ、食事は工夫しながら無理なく楽しみましょう。


食事が食べられない、また料理を作ることがストレスになる人は、病院やクリニックの食事、宅配弁当などを利用するのもおすすめ。栄養管理された彩りのよいメニューを、手軽に食べることができます。

 これまで2回の連載では、透析患者さんが気をつけなければならない成分や、毎日の食事で意外と見落とされているポイントについて、ご紹介してきました。確かに透析導入後は、それ以前と比べて、控えるべき食材や調味料が多くなります。しかし、食事は毎日摂るものであり、何よりも食べることは心と身体にとっての“栄養”でもあります。無理をしない範囲で、工夫をしながら食事や料理を楽しむことが、QOL(生活の質)をより高めてくれるはずです。
 食欲の旺盛な方は、少しの食事でもたくさん食べたと感じられるよう品数を増やしたり、食材やお皿で食卓の彩りを良くすることで、満足感を得られるようになります。反対に、あまり食欲のない方は、まずは食べられない原因を見つけましょう。甲状腺の機能が低下していたり、外出の機会も減って生活に刺激が少ないために気持ちが落ち込みやすくなり食欲が減退するなど、理由はさまざまです。医師や管理栄養士に相談しながら、必要な栄養はしっかり摂取してください。場合によっては、通院している病院やクリニックが提供する食事を利用するのも良いでしょう。今では透析患者さんのために栄養管理された宅配弁当もありますので、このようなサービスを選ぶのも一つの方法だと思います。

生涯を通して楽しめる生きがいは、まさに “心の栄養” です。


市川先生が担当されている患者さんが描かれた絵。先生のお部屋に飾られています。

 食べることは生きていくために欠かせないものですが、同時に心にも大きな影響を及ぼします。食べられる喜びやおいしいと感じる気持ちは、心を豊かにしますし、さらに人と食事をともにすることは、コミュニケーションやふれあいのきっかけを作ります。食べることは生活の中で最も身近なことの一つですから、家族や医療チームと手をつないで、協力しながら取り組んでいくことが、療養生活をより豊かなものにします。
 また、仕事や趣味など、生きがいを見つけることも “心の栄養” になります。みなさんは今、何か一生懸命に取り組んでいるものはありますか?透析患者さんは、透析をするために生きているのではありません。今、自分自身がやりたいことを精一杯するために、透析という一つの方法があるのです。私が担当している患者さんの中には、家族が食べる野菜を畑で育てたり、高齢になってから描き始めた絵を楽しむなど、好きなことを見つけていきいきと過ごしている方がたくさんいます。日常のちょっとしたことにも興味を持ち、「好きなこと」「やってみたいこと」を探してみてください。自ら求めて取り組み、変化が見えた時、本当の意味でその人の“生きがい”になると思います。

監修者

お話を伺った先生

川崎医科大学附属病院
市川 和子 先生

川崎医科大学附属病院 栄養部栄養課長。腎臓疾患の患者や透析をされている方を中心に、栄養指導を実施。チーム医療の一員として、栄養面から患者をサポートされています。臨床透析や栄養ケアに関する著書も多数。

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