透析を受けながら活躍する人々

掲載:2013年 vol.14

井上 剛一さん

一度死ぬ準備をしたから、
あとの人生はおまけ。
「一日一生」。
私には透析と付き合いながらも
生きる意味があると思っています。

井上 剛一さん

株式会社アイジーコンサルティング
代表取締役社長

総合住宅サービス企業の社長として活躍されている井上剛一さん。
若くして背負った重責の中、続けて襲われた大きな病。
死を覚悟してなお前進し続ける、力強い姿に迫りました。

井上 剛一 さん
1966年、静岡県浜松市生まれ。大学進学後、厚木市で事業を始めたが、叔父の強い勧めで現在の会社に専務として就職。実質的に経営の指揮をとる。2007年膀胱癌が発覚し、人工膀胱と透析のためのシャント手術を受ける。現在、社員180名をまとめる総合住宅サービス企業の社長として活躍中。半生を綴った書籍に『改革するは異端児にあり』(文芸社)。

重ねた心身の疲れが、二つの大病を引き起こしたのです。

横浜支店の社長室にて。後ろに見えるのは、哲学家・行徳哲男氏から贈られた書。
「天はあなたに災いを与えても、決して見捨てはしない」という意味が込められている。

井上さんの誕生日に、社員のみなさんから贈られたメッセージ。「これを見る度に、社員は私が守るんだ、と気持ちを新たにします」と井上さん。

 現在社長を務めている(株)アイジーコンサルティングは、主に住宅の新築設計・施工から総合リフォーム、耐震補強などを行う企業です。私で4代目になります。
 大学へ進学した頃、当時父が経営していた今の会社は業績が思わしくありませんでした。私はすでに厚木で事業を始めていましたが、この時病に臥せっていた叔父の遺言により、専務としてここへ就職することになったんです。24歳の時でした。入社後、まず注力したのが、若いスタッフのパワーや能力を積極的に取り入れること。「父の会社を乗っ取る」という、ある意味センセーショナルなメッセージを掲げて社内改革を行い、経営の立て直しを図りました。当時の父はよく黙って見ていてくれたな、と今になって思います(笑)。
 がむしゃらに仕事をし、ようやく先が見通せるようになった41歳の時、血尿が出たんです。検査の結果、膀胱癌でした。この時初めて、自分が心も体も相当疲れていたと知りました。人口膀胱の手術を受けるにあたり、腎機能もずいぶん弱っていたため、事前に血液透析を前提としたシャント手術を行うことに。腎臓は、幼い頃に腎盂炎を患ったり、27歳で受けた人間ドックでクレアチニンの値が上がっているなど、気にかかることはありましたが、それでも透析の導入はまさかという思いでしたね。手術後、シャントの音が気になって眠れない日が続いたり、経営者として考え、行動しなければならない責任から精神的・体力的につらい時期もありました。でも癌を経験し、一度死ぬ準備をしたから、あとの人生はおまけのようなもの。「一日一生」、私には透析と付き合いながらも生きる意味があるのです。そのことを強く感じるのは、社員の皆との繋がりを実感する時。一人ひとり、いろんな悩みを抱えていると思いますが、ひたむきにがんばる姿を見る度、尊敬の気持ちを抱くとともに、自分が守っていくんだと気持ちを新たにします。皆も、思いやりを持っていつも僕を気遣ってくれます。「社会と社員の生活向上」が、私とこの会社の使命。これからも、社員の皆とともに大きく成長していきたいと思っています。

企業理念は本社とすべての事業所に掲げ、社員全員で共有。一年に4回社員総会を行い、課題を見つけて話し合う。迷ったら企業理念や提供価値に立ち返り、確認するそう。

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