透析ケアとこころの健康

身体や生活上の大きな変化は
誰でも受け入れにくいものです。

 透析患者さんの多くは、透析を受け続けていく中で、身体だけでなく心にも大きな負担を感じています。透析を一生続けていかなければならないことや、治療のための時間的・身体的拘束が日常的に続くことが、ストレスにつながるのです。
 医師の伝え方によっても異なりますが、透析を導入する際の告知も、患者さんにとってはショックが大きく、受け入れられないものです。また導入してから数年は、健康な状態の自分を鮮明に覚えていることから、なかなか現状を認めにくい一方で、毎日の食事や治療を通して、透析を受けていることを自覚することが多くなり、葛藤を感じることもあります。
 しかし、身体や生活上の大きな変化は、誰でも簡単に受け入れられるものではありません。現状をありのまま見つめられるまで、必ず時間はかかるものなのです。

思いやりのあるふれあいが、
互いの心を支えてくれます。

 透析患者さんには、不安や抑うつ(うつ状態)などを訴える方が多くいらっしゃいます。透析を始めた頃は、特に将来的なことに意識が集中して不安を感じやすいこともあります。  心の状態は、行動に現れます。患者さんによって異なりますが、無自覚のうちに多弁、人への攻撃・依存などが見られます。これは不安な状態の自分を防衛するという人間の本能による行為で、誰もが「気持ちの葛藤」を感じた時にそうする傾向があるのです。  こうした悩みは、家族や医療スタッフ、時には患者さん同士による交流で、和らぐことがあります。互いの立場を思いやりながら、共感したり情報を交換したり、時には少しだけ甘えるといったふれあいが、自分だけでなく周囲の人の心を支えてくれるのではないでしょうか。

「心地良い」「楽しい」と感じることが、
生きがいにつながります。

 透析治療を続けることについて、心で受け入れることは簡単なことではありません。しかし、その一方で、少しでも前向きに良く生きたいという患者さんも、たくさんいらっしゃるでしょう。
 趣味など「生きがい」と感じられるものがある方は、ぜひ続けていかれることをおすすめします。「好き」というエネルギーは大きなもので、継続していくことでさらに愛着や自信が芽生え、自分自身を支えてくれます。
 もしまだ「生きがい」を見つけられていないという方は、まずは「心地良い」「楽しい」と感じられる時間や場所、人、活動に出合うことから始めてみましょう。いろいろなことを試してみて、一つでも自分にとって快いと思えることがあれば、少し続けてみてください。きっと、「生きがい」を見つけられるきっかけにつながると思います。

福西 勇夫 先生

お話を伺った先生

南青山アンティーク通りクリニック
福西 勇夫 先生

南青山アンティーク通りクリニック院長・理事長。医学博士。精神療法や家族指導に精通し、透析を受けている方のメンタルケアの実績も豊富。サイコネフロロジー(腎臓精神医学)に関する著書も多数。

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