Mental Care

心も健康でいるために 第2回

精神科医が腎臓病の診療にあたる
サイコネフロロジーの意味

前号でご紹介したように、サイコネフロロジーは
精神科医が腎臓病学、腎疾患の看護学の医療者と協力しながら、
腎不全で透析を受けている方々のストレスをケアしたり、
精神的な症状や問題行動の治療に取り組む試みです。
透析を受け続けることは、心理的にも負担をともないます。
精神科医が診療チームに加わり、連携して治療に取り組むことで、
透析を受けている方の心理的症状や問題行動の予防、
早期発見、早期治療などを行うことができると期待されています。
透析を受けている方の数は年々増えています。
今後ますます大きくなると考えられるサイコネフロロジーの役割を、
わかりやすく解説します。

なぜ、サイコネフロロジーか

 サイコネフロロジーは、透析を受けている人をはじめ、腎臓病・腎疾患の患者さん、腎移植のレシピエントとドナーにかかわる領域を、精神医学と腎臓病学の双方からアプローチする医学分野です。
 腎臓病に限らず、患者を心理的、精神的にサポートすることは、医療においては疾患を治療するのと同じように重要です。しかし、一生続けなければいけないということ、セルフケアが求められる点などにおいて、透析はほかの疾患とは少し事情が異なります。
 透析を受け続けることの心理的負担は、不安や抑うつとして現れることがよくあります。また、セルフケアを続けなければいけないというストレスから自暴自棄になったり、医療スタッフとトラブルになったりするケースも少なくありません。透析を一生続けなければならないため、合併症や認知症を発症するなど、さまざまな問題に直面することもあります。こうした心理的症状や、そこから発生する問題行動を治療し、ケアするのがサイコネフロロジーなのです。

医療者と患者さんの協力的で共感的な関係

 前号でお話をうかがったサイコネフロロジーの第一人者の堀川直史先生が、サイコネフロロジーを実践するうえで重視しているのは、透析を受けている方と医療者が協力的で共感的な関係を築いていくことです。そのためには、医療者が患者さんの状態を一方的に判断して批判したり解釈しようとするのではなく、患者さんを理解しようとすることが大切だと堀川先生は指摘します。
 患者さんを理解する手法の一つとして堀川先生があげるのは、医療者が患者さんの話を「よく聞く」ということ。これはただ症状を聞くというのではなく、人によって異なる苦痛や考え方、ニーズにも関心をもち、その人を知るということ。次に心理的距離を保ちながらも、苦痛や生活への影響などについて質問し、本人の苦境を理解して「大変だろうな」「辛いだろうな」と共に感じることが大切だといいます。医療者の心に湧き出た自然な感情は患者さんにも伝わり、患者さんも「わかってくれている」と安心感を得ることができます。こうして築く共感的で協力的な関係が、長く続く透析ライフをスムーズにすると堀川先生は言います。

サイコネフロロジーへ高まる期待と関心

 サイコネフロロジーはまだ新しい医学分野ですが、医療関係者からの関心は高まりつつあります。各地で開催される研究会でも、増えている高齢透析者の心のケアや、小児科や青年期の透析者へのアプローチの仕方、透析を受けている方のエンパワメント、睡眠障害への対処法など、さまざまな報告がされています。研究会には医療関係者だけでなく透析を受けている方やそのご家族が出席することもあり、サイコネフロロジーへの期待と関心の高さを物語っています。

堀川直史 先生

東京医科歯科大学医学部卒業。東京女子医科大学、武蔵野赤十字病院を経て、現在、埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニック教授。研究分野はコンサルテーション・リエゾン精神医学、精神病理学、精神療法

堀川直史 先生

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