Mental Care

心も健康でいるために 第1回

腎臓病患者さんの心をケアする
"サイコネフロロジー"

透析を受けている方には、
本人にしかわからない心の悩みや苦しみがあります。
そこから生まれる心理的な症状や行動の問題もあります。
そんな問題に、身体的な医療と精神的な
医学の双方から研究する取り組みが行われています。
このようなアプローチをとる医学分野が”サイコネフロロジー”です。
いち早く”サイコネフロロジー”の重要性に着目し実践している、
埼玉医科大学総合医療センター、
メンタルクリニック教授の堀川直史先生に、
”サイコネフロロジー” とは何か、
また透析を受けている人の心理と、
陥りやすい心理的な症状をうかがいました。

腎臓病学と精神医学の中間

現在、精神科医がほかの診療科と協力しながら、患者さんのストレスをケアしたり、精神的な症状や問題行動の治療をする試みが進んでいます。コンサルテーション・リエゾン精神医学(CLP)と呼ばれる、新しい分野です。患者さんが家族や医師たちとうまくいかないような時にも、間にはいって患者さんや医療チームの相談にのることもあります。

C L Pのうち、腎不全で透析を受けている人や、腎移植のレシピエントとドナーなどに関係する領域は、サイコネフロロジーと呼ばれています。サイコネフロロジーは「サイコ=精神・心理」と「ネフロロジー=腎臓病学」の合成語で、日本語に訳すなら「精神腎臓病学」となります。ひと言で説明するなら、精神医学と腎臓病学の中間に当たる医学と言えるでしょう。

セルフケアが心理的負担に

透析を導入した人がまず直面する生活の変化。週数回の透析とそれに伴う生活の制約、社会的役割や職場の人間関係、家族関係の変化など、生活のさまざまな変化を受け入れるのは大変です。継続して治療を続けるなかで、医師や看護師、家族や患者さん同士のトラブルが起こることもあります。そして、それがさらなる負担となるのです。

治療とケアは、医師と患者さんが相談して進めていくわけですが、なかでも食事制限や透析、運動など、自分自身が行わなくてはならないことの負担は大きなものとなります。主体的に治療とケアに参加しなくてはならないセルフケアは、透析を受けている人特有の負担と言ってもいいでしょう。

患者さんの気持ちをじっくりと聞く

セルフケアの負担はとても大きく、思い通りにセルフケアを続けることができない人もたくさんいます。また、適切なセルフケアを続けている人でも、合併症などが起こると、それまでの努力の疲れが一気に現れ、燃え尽き症候群のようにセルフケアを止めてしまうこともあります。

透析を受けていて適切なセルフケアを続けることができない人のなかには、まれですが、「太く短く生きるから、ほっといてくれ」と言う人がいます。実はこれは、セルフケアがうまくできていないことによる自信喪失、罪悪感、自分への苛立ちの気持ちの裏返しだったりするのです。

このような場合、サイコネフロロジーではじっくりと話を聞き、気持ちを理解するよう努めます。その上で相談しながら、セルフケアのなかでできることを少しずつ増やし、自信回復へとつなげていきます。口では「ほっといてくれ」と言っても、心の底ではセルフケアを続けたいと願っている人の気持ちを理解し、支えとなるのがサイコネフロロジーです。

堀川直史 先生

東京医科歯科大学医学部卒業。東京女子医科大学、武蔵野赤十字病院を経て、現在、埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニック教授。研究分野はコンサルテーション・リエゾン精神医学、精神病理学、精神療法

堀川直史 先生

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